物語に使える!繁栄する国と衰退する国の違いを徹底解説


「転生したらスライムだった件」や「オーバーロード」、「現実主義勇者の王国再建記」など、国を発展させていくアニメや物語は多くあります。

しかも、人気な作品も多いです。

しかし、国を発展させるには、具体的に何をすれば良いのでしょうか?

ここでは、2024年ノーベル経済学賞を受賞した、ダロン・アセモグル氏著『国家はなぜ衰退するのか』を参考に、国の発展と衰退を分けるポイントは何なのかについて解説していこうと思います。

違いは制度にあり

さて、結論から言うと、繁栄と衰退を分ける鍵は、ズバリ”制度”です。

もっと言うと、”経済制度”と”政治制度”が重要なファクターとなります。
それぞれ、詳しく説明していきます。

繁栄をもたらす経済制度、衰退をもたらす経済制度

ビジネス


どんな制度が繁栄をもたらし、どんな制度が衰退をもたらすのでしょうか?

ポイントは、”自由”にあります。


”自由”というと、倫理的な問題を思い浮かべる人もいるでしょう。

実際、そのような物語の展開も多くありますしね。
幼い子どもが奴隷として売られていることを憐れむ描写とか。


しかし、ここでは、あくまでロジカルに考えていきましょう。

つまり、「なぜ奴隷は国家の繁栄を妨げるのか」ということです。
もしも奴隷制度が国家の繁栄を支えるものであるのなら、ある意味で、奴隷制度は正しいということになります。


そして、「なぜ奴隷は国家の繁栄を妨げるのか」という問いの答えは、端的に言えば「自由でないから」なのです。

自由でないと何がまずいのかと言うと、高確率で才能の芽を摘んでしまうのです。


例えば、誰もが知っている発明王、トーマス・エジソンを考えてみましょう。

彼がもし、農奴として無給の農作業をさせられていたら、白熱電球の発明はもっと遅れていたでしょう。


つまり、エジソンに発明をさせる環境が必要なわけです。

「では、エジソンを奴隷として発明させれば問題ないのでは?」と思われるかもしれませんね。

しかし、今でこそ発明王として有名なエジソンですが、当時の人の立場に立ってみると、彼が発明の才能を秘めていることを見抜くのは、簡単ではなかったでしょう。

現に、当時ほとんどの人がエジソンの才能を見抜けなかったのですから。(ミミズを食べさせてくる友達に発明の才能があるとみなさんは考えますか?)

増して、国民全員の才能を見抜き、適材適所で働かせるなんて、不可能です。


そこで、重要なのが、”自由”です。

みんなが自由に働く場所や業務が選べるようになれば、勝手に適材適所になります。

自分に合わない職場であったとしても、転職を続ければ、いずれ適した職場に落ち着くからです。


このような話は、何も労働に限った話ではありません。あらゆる経済活動に適用されます。

つまり、誰もが自由に市場に参加・撤退し、経済活動ができる制度が繁栄をもたらす制度だと言えるのです。

具体的に国家がするべきことの一例としては、

  • 公平な財産権の保障
  • 独占禁止法をはじめとした法律の執行
  • 公共サービス(インフラ整備、教育、治安維持、社会保障や社会保険など)


が挙げられます。

繁栄をもたらす政治制度、衰退をもたらす政治制度

政治


さて、ここまで経済制度について考えてきましたが、経済と切っても切れない関係にあるのが、政治です。

なぜなら、経済制度を決めるのは政治家(あるいは王・皇帝・貴族・地主などのエリート)だからです。


そして、誰がその政治家となるのかを左右するのが政治制度。

つまり、経済制度と政治制度には密接な関係があるということです。


では、どんな政治制度が繁栄をもたらすのでしょうか?


歴史上最も採用されてきた政治制度が、君主制。

ざっくり言えば、王家にすべて任せるやり方ですね。

そのおかげで人類社会は大きく発展しましたが、君主制の負の側面を想像するのは難しくありません。


誰か1人に権力を集中させると、その人が私利私欲のためだけに権力を行使し始める、というのがオチです。

そのうえ、権力を集中させてしまったがために、誰も彼を止めることが出来ません。

王による重税や無給労働、性暴力が横行し、王は巨万の富を築く一方で、国民は極貧状態。

こんな状態では国家が衰退するのも当然です。


では、権力を分散させる、”分権”が正しい政治制度なのでしょうか。

三権分立はよくできた制度ですので、とにかく分権すればいいと思いがちですが、実は落とし穴もあります。

それは、分権しすぎると秩序が保てないという点です。


例えば、私たちが法律に素直に従っているのはなぜでしょうか?

警察や裁判所が司法において、圧倒的な権力を持っているからですよね。(三権分立により、裁判所が暴走しないようになってはいますが)

もしも裁判所が何の権力も持っていなかったとしたら…………

犯罪を犯しても裁かれないため、誰も法律を守らなくなります。

それでも法律を守ろうとする人もいるでしょうが、自衛のために法を犯さざるを得なくなるでしょう。

そうなれば、犯罪が横行し、いつ隣人が自分を襲ってきてもおかしくない、無秩序社会の完成です。

全国民が誰も互いを信じることができなくなり、国の発展どころではありません。


つまり、繁栄をもたらす政治制度とは、国家が暴走しないように分権しつつ、最低限の法律を強制できる程度に集権させる制度なのです。

三権分立が良い例ですね!

まとめ

成長


繁栄する国と衰退する国の違いについて解説してきました。

繁栄と衰退を分けるポイントは”制度”にあると考えられます。


繁栄をもたらす制度とは、

  • 誰でも自由に市場に参加し、経済活動ができる経済制度
  • 十分に分権されているが、法律が執行できる程度には集権されている政治制度


です。


逆に衰退をもたらす制度とは、

  • エリートだけに自由が与えられ、社会的弱者はエリートに従わざるを得なくなる経済制度
  • 特定の誰かに権力が集中する、あるいは、誰もが同等の権力を持つような政治制度


です。


しかし、

「制度が重要なのは分かるけど、国が繁栄する要因は他にもあるんじゃないの?」
「具体的な事例は?」
「権力が集中していても発展する例もあるんじゃない?」

など、たくさんの疑問が浮かんでくる方も多いでしょう。


このような疑問にも答えようと思っておりますので、お楽しみに!

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